小室哲哉(Key)、宇都宮隆(Vo)、木根尚登(Gt,Key)の3人により1983年5月に結成された音楽ユニット・TM NETWORKのドキュメンタリー作品、『TM NETWORK Carry on the Memories -3つの個性と一つの想い-』の公開に先駆け、2月19日にユナイテッド・シネマ アクアシティお台場にて舞台挨拶付き最速上映会を開催した。TM NETWORKの小室哲哉、宇都宮隆、木根尚登が登壇し、完成を迎えた喜びや、本作の制作秘話、作品に込められた想いを語った。
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イベント開始前から熱気に満ち溢れる場内。大歓声を浴びながらステージに登場した3人は会場を見渡し笑顔。「こんなに(たくさんの)フラッシュ、ありがとうございます。来ていただいてうれしいです」との木根の挨拶に続き、宇都宮は「ちょっとだけ緊張します」と話すも、「ライブとは違う緊張感?」とのMCの問いかけに、「ちょっとどころじゃない緊張です」と正直な心境を明かし、会場から温かい拍手が送られる。会場の拍手も歓声も鳴り止まない中での冒頭の挨拶となったが、小室が「40周年をやっているんだなという感慨深い感じがします」とニッコリすると、会場からは「ありがとう!」との感謝の声も飛んでいた。
イベント参加者は倍率7倍のチケット争奪戦を勝ち抜いたファンたち。試写会での舞台挨拶は初めてという宇都宮は「独特の感じと緊張があります」とまだまだ会場の雰囲気に慣れない様子。サントラなどを担当し、舞台挨拶への参加経験のある小室は「メンバーと並んでの舞台挨拶は初めて。だって、(自分たちの)映画が初めてだから!」と語り、メンバーにとっても貴重な機会になっていると話していた。
映画化の経緯について「何も知らなかった」と明かした宇都宮は、いつもカメラが回っている状況に「Blu-rayの特典かな、と思っていて」とニコニコ。実は映画になると、途中で聞かされたと振り返り、「“は?”“そうなの?”みたいな感じでした。驚きの中には、いったいどんな映像が(世に)出てしまうのか、みたいな気持ちもあって」と語る宇都宮のコメントに木根は「なんとなく伝えなかった(理由)は分かる」とし、もし最初から伝えられていたら、「僕は常に肩パットの入ったスーツを着て、サングラスをしてラーメンを食べていたかもしれない(笑)」と知らされていなかったからこそ、自然な姿をカメラに収めることができたと笑い飛ばし、「知らなくてよかった」と力を込め、会場の笑いを誘っていた。
ツアーの準備は「ものすごく大変でした」としみじみした宇都宮は「今までにないくらい大変。なんとか無事に終わってくれたからホッとしているけれど、振り返ると1本(ライブが)終わるたびに面白さが増していった感じ。最初は緊張というのかな。どうやったらショーを完成させられるのかが気になっていたけれど、やっていくうちに楽しさが増していったというのがありました」と満足の表情を浮かべていた。
ライブには常にサポートメンバーがいるものだと思っていたという木根は「最初、3人だけでやるって知らなくて。40本頑張りました!」と満面の笑み。「自慢じゃないけれど…」と切り出した木根は、「練習をすごくしました。ご存知のように普段はエレキをほとんどサポート(メンバー)が弾いているから、“ギター音出てないぞ!”って言われて“あ、俺か”みたいなやりとりになることがありました」とFANKS(TM NETWORKファンの呼称)にお馴染みのトークで笑わせる。「名誉のために言うと…」とニヤニヤしながら話し始めた小室が「木根さんは(普段は)サイドギター!」とフォローをすると、「グループ・サウンズだからね」とすかさず反応する木根。笑いを堪えながらも「(普段は)ソロこそ弾かないけれど、サイドギターをやっている。今回はリードを弾く、ソロを弾くから大変だったと思います」と小室が木根を労うと、会場には大きな拍手が響き渡っていた。
本作はHARA監督自らが300時間もカメラを持ち撮影をした。総合演出・音楽監督を務めた小室は「僕は大したことをしていない」と控えめにコメントし、300時間の映像から凝縮したものを観ながら、HARA監督からのリクエストのメモをもとに、音楽をつけていったという。「HARAくんが描きたいもの、心象描写みたいなものをメモや映像を観ながら汲み取って行きました」と制作過程を振り返る。「木根さんが圧倒的にお話ししているから、削るのも大変だったと思います。宇都宮は(ライブ中ということもあり)喉を気遣っているのが手に取るように分かります」とHARA監督がまとめた映像に触れ、「言葉数が少ない宇都宮とおしゃべりが止まらない木根さん。その割合が大変だったと思います」と語る小室に、木根は300時間でたくさんしゃべっていることを認め、「HARAさんは僕のこと嫌いだと思います」とHARA監督の気持ちを予想し、会場の笑いを誘う場面も。さらに小室が「木根さんのしゃべりに音楽をつけると、感動する言葉になったりするのかな(笑)、なんて思ったりもして」とニヤリとすると、会場のあちこちで吹き出すファンの姿も見られた。
映画のタイトルにもなった「Carry on the Memories」について「映像をまとめる役目という形で作りました」と語った小室は、「とはいえ、偶発的にできた曲でもあります」と楽曲誕生の経緯についてコメント。出来上がった映像は「チェックがてらザッと観ました」と告白した木根は「何かNGがあったら教えてくださいって言われたけれど、基本的には全部NG(笑)」とニヤニヤ。その理由は“素”が出過ぎていることでもあると説明した小室は「本当に素。最初の1ヶ月くらいはカメラを気にしていたけれど、すぐに忘れてしまって。空気を消されていたから」とカメラを意識していなかったと強調。MCもあまりやらないバンドとして知られているが、宇都宮は本作について「いつもがバレたという感覚です」と照れながら話していた。
映画公開日の2月28日は「ビスケットの日」とのことで、3人の好きなお菓子を発表するコーナーも。「ビスケットの日」と聞いて、自身のポケットをポンポンと叩きながら「ふしぎなポケット」を小声で楽しそうに歌う宇都宮に木根は「みんな知らないかも…」と心配する場面も。しかし会場から「知ってるー!」の声が飛ぶと、木根が「よかったじゃん!」と宇都宮の背中にそっと手を添えるなど、仲の良さを見せていた。ちなみに好きなお菓子については木根が「うに煎餅」、宇都宮が「ソフトサラダ」と回答。小室は「置いてあるものを割と食べちゃう」と意外な一面を明かし、「最近はチョコレートが好き」とのこと。さらに、これまで飲食する姿をあまり見せてこなかった3人だが、映画の中では割と食べるシーンも出てくるそうで、MCから「映画では小室さんがとてもまめな一面を見せています!」と指摘し、注目の“飲食シーン”があることをほのめかしていた。
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40年を振り返り、印象に残っているのは「初期の頃」だという3人。木根は「40度の熱が出て“ベストテン”をお休みしたことがあった。確か大阪城ホールの時。ホテルの部屋で自分のいない『RESISTANCE』のパフォーマンスを観ていました」と懐かしむ。「覚えていない」と話した宇都宮に対し、木根が「あんまり後ろの人のことは見ていないからね」などとツッコミを入れるなど、テンポの良いトークに会場は大爆笑だった。宇都宮は「プロモーション、レコーディング、MVの撮影が蜜だった」とし、「ビデオの撮影がとにかく多い。夏にリリースするものを冬に撮る。だいたい極端に反対の季節に撮るから…」と大変ながらも充実したいい思い出だと話していた。
小室の思い出はさらに遡り「木根さんのお家にみんなで集まっていた頃が印象に残っています。リビングにピアノがあってそこにいつも集まっていました」とニコニコ。当時の情景は今でも鮮明に浮かぶそうで、「本当に原点。それが歌の歌詞にもなっています」とギター、ピアノというフレーズが出てくる楽曲に込められた思いにも触れていた。
3人仲良くいる秘訣については、「たまに会うからいい」と答えた宇都宮の言葉に、木根も小室も「本当にそう!」と納得。「家族を超えている?」との質問には「うーーーん」と仲良く考え込んだ3人だが、小室が「こういう質問をされた時によく答えることだけど」と前置きし、「絶妙な空気感じゃないかな」と長く続く秘訣を挙げていた。
最後の挨拶で小室は「HARAさんに感謝したい。そして自由に音楽を作らせてくれたこと、(映画を観てもらう)ファンのみなさんにも感謝したいです」とお辞儀。ずっと緊張していたという宇都宮は「3月からツアーが始まるので、ぜひ、よろしくお願いいたします!」とアピール。木根は「(映画は)木根さんがしゃべってるんだ…と思ったかもしれませんが、まあ、しゃべってます(笑)」とおしゃべりを再び認めて笑いを誘い、「観てもらいたいのはずっと夢に見てたギターを弾いています。なんの変哲もないギターだけど(自分にとっては思い入れがあるので)、ぜひ観てね」と呼びかけイベントを締めくくった。
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マスコミ向けのフォトセッション時には様々なポーズを見せた3人。「FANKSのみなさんのおかげで自然と笑顔になれます!」と感謝の言葉を伝える小室に観客は大よろこび。感謝の気持ちを伝えるべく、大きく手を振り続けた3人は、ライブさながらの声援と拍手に包まれながら、熱く盛り上がったステージを後にした。
2025年2月28日(金)ユナイテッド・シネマ アクアシティお台場、新宿ピカデリーほかにて公開